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土砂降り









「うくぅ」

 円香の閉じた口をこじ開けるようにして、プロデューサーの、ぬめりを帯びた舌が入り込む。

 眠気覚ましに飲んでいたのであろう、微糖タイプの缶コーヒー。いつも飲んでいる、DieDo社製のそれ。僅かな甘味と多くの苦みを帯びた味を、円香はまるで、媚薬のように感じていた。

(……好き)

 円香はいつの間にか、両腕をプロデューサーの背中に回していた。しばらく離れないでくださいねと、力を込めて。

 まるでわけがわからない行動。キスなんて、早く済ませてくださいだなんて、どの口が言うのか?

「ん、ぅぅ」

 それでも、熱病のような異常行動は続く。いつしか、円香も舌を伸ばして、積極的に絡み合わせていたのだった。

(私。キス、だけで……いやらしい気になっていく。なんで、こんな)

 円香はプロデューサーの右手を引き、スカートの中へと誘っていた。

 キスだけでなく、指で敏感なところをいじってくださいという、円香からのおねだり。

「ああ……」

 プロデューサーは、円香の要請を了解したようだ。柔らかな太股を、手の平で何度となくさする。ストッキングごしではあるけれど、手の平の温もりが伝わってくる。くすぐったさに、円香は首筋をぶるると震わせる。

「くひっ」

 つぷりと、突かれる感触。プロデューサーの指先。かたい爪が割れ目に、押し込むようにして触れた。

「ん……。そう。それでいいです。続けてください」

 悪くないです。いいですよと、上から目線で指導する気分。リードするのはあくまでも自分。余裕を見せる。

 けれどそれは、明らかに円香のやせ我慢。

「んぁ……。やっ」

 びり、ぶきゅぶきゅ、と、裂くような音。円香の黒いストッキングが、一部分だけ破られていく。

 プロデューサーは、もう一つの隔壁である白いショーツを軽々とずらし、ごそごそと指を忍び込ませ、割れ目に触れる。入り口周りの敏感な部分を確認してから、円を描くようになぞっていく。

「うぁあ……。だ、め。んんぅ!」

 円香は、どうしても漏れてしまう吐息を悟られないように、つい唇を離してしまう。けれどすぐに、迷子が親の手で掴まれて引き戻されるかのように、新たなキスを要求された。

「ん、んんぅ……」

 普段の警戒した眼差しが嘘のよう。円香は既に、視線が定まらない程に、呆けた表情になっていた。

(こんな……。キス、だけでもすごい、のに。そっち、まで。ああ……)

 びりっと、鈍い音。ストッキングの裂け目が一気に大きくなる。プロデューサーの指が、にゅぷりとした感触と共に、円香の中へと進入していく。

「あ、あっ! 入って……く」

 小手調べとばかりに、小刻みな出入り。ちゅぷちゅぷと泡立つように、入り口付近がほぐされていく。やがて、にゅるりと、とろみを帯びた愛液が、僅かながら分泌されていく。

「んぅ……。はぅ、あぅ」

 ざらりとした、舌同士の感覚。

 こちらも下の方と同じように、くちゅくちゅと、垂れていくのがわかる。

(ぷろでゅ……さ……)

 もう完全に、円香はペースを奪われていた。

 もはや、されるがまま。

(だめ。指、気持ちいい……。キスも、いぃ)

 イきそうだなんて、言えない。円香のプライドが、許さない。認めたくない。

(だめ、なのに)

 スカートの中は、お漏らしでもしたかのようになっていく。

 口元は、互いの唾液が混じり合い、ベトベトになって、滴り落ちていく。

(最……低っ)

 それは、余裕そうなふりをしておきながら、あっさりと快楽に溺れてしまった、見苦しい自分のことを言っているのだろうか。

 あるいは、女子の体を好き放題にいじくり回し、恥辱の限りを尽くしている悪漢こと、プロデューサーを意味するのだろうか?

「う、あ……。だ、めぇ……。あっん」

 円香はただ、小刻みにひくひくと震えながら、緩やかに快楽の頂点に達しようとしていた。

(おかしく、なる……)

 敏感になりすぎていく。

 プロデューサーの指と舌が、円香を惑わす。

(い、く……)

 抗うことなど、できなかった。



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