土砂降り
4 「うくぅ」 円香の閉じた口をこじ開けるようにして、プロデューサーの、ぬめりを帯びた舌が入り込む。 眠気覚ましに飲んでいたのであろう、微糖タイプの缶コーヒー。いつも飲んでいる、DieDo社製のそれ。僅かな甘味と多くの苦みを帯びた味を、円香はまるで、媚薬のように感じていた。 (……好き) 円香はいつの間にか、両腕をプロデューサーの背中に回していた。しばらく離れないでくださいねと、力を込めて。 まるでわけがわからない行動。キスなんて、早く済ませてくださいだなんて、どの口が言うのか? 「ん、ぅぅ」 それでも、熱病のような異常行動は続く。いつしか、円香も舌を伸ばして、積極的に絡み合わせていたのだった。 (私。キス、だけで……いやらしい気になっていく。なんで、こんな) 円香はプロデューサーの右手を引き、スカートの中へと誘っていた。 キスだけでなく、指で敏感なところをいじってくださいという、円香からのおねだり。 「ああ……」 プロデューサーは、円香の要請を了解したようだ。柔らかな太股を、手の平で何度となくさする。ストッキングごしではあるけれど、手の平の温もりが伝わってくる。くすぐったさに、円香は首筋をぶるると震わせる。 「くひっ」 つぷりと、突かれる感触。プロデューサーの指先。かたい爪が割れ目に、押し込むようにして触れた。 「ん……。そう。それでいいです。続けてください」 悪くないです。いいですよと、上から目線で指導する気分。リードするのはあくまでも自分。余裕を見せる。 けれどそれは、明らかに円香のやせ我慢。 「んぁ……。やっ」 びり、ぶきゅぶきゅ、と、裂くような音。円香の黒いストッキングが、一部分だけ破られていく。 プロデューサーは、もう一つの隔壁である白いショーツを軽々とずらし、ごそごそと指を忍び込ませ、割れ目に触れる。入り口周りの敏感な部分を確認してから、円を描くようになぞっていく。 「うぁあ……。だ、め。んんぅ!」 円香は、どうしても漏れてしまう吐息を悟られないように、つい唇を離してしまう。けれどすぐに、迷子が親の手で掴まれて引き戻されるかのように、新たなキスを要求された。 「ん、んんぅ……」 普段の警戒した眼差しが嘘のよう。円香は既に、視線が定まらない程に、呆けた表情になっていた。 (こんな……。キス、だけでもすごい、のに。そっち、まで。ああ……) びりっと、鈍い音。ストッキングの裂け目が一気に大きくなる。プロデューサーの指が、にゅぷりとした感触と共に、円香の中へと進入していく。 「あ、あっ! 入って……く」 小手調べとばかりに、小刻みな出入り。ちゅぷちゅぷと泡立つように、入り口付近がほぐされていく。やがて、にゅるりと、とろみを帯びた愛液が、僅かながら分泌されていく。 「んぅ……。はぅ、あぅ」 ざらりとした、舌同士の感覚。 こちらも下の方と同じように、くちゅくちゅと、垂れていくのがわかる。 (ぷろでゅ……さ……) もう完全に、円香はペースを奪われていた。 もはや、されるがまま。 (だめ。指、気持ちいい……。キスも、いぃ) イきそうだなんて、言えない。円香のプライドが、許さない。認めたくない。 (だめ、なのに) スカートの中は、お漏らしでもしたかのようになっていく。 口元は、互いの唾液が混じり合い、ベトベトになって、滴り落ちていく。 (最……低っ) それは、余裕そうなふりをしておきながら、あっさりと快楽に溺れてしまった、見苦しい自分のことを言っているのだろうか。 あるいは、女子の体を好き放題にいじくり回し、恥辱の限りを尽くしている悪漢こと、プロデューサーを意味するのだろうか? 「う、あ……。だ、めぇ……。あっん」 円香はただ、小刻みにひくひくと震えながら、緩やかに快楽の頂点に達しようとしていた。 (おかしく、なる……) 敏感になりすぎていく。 プロデューサーの指と舌が、円香を惑わす。 (い、く……) 抗うことなど、できなかった。 |