土砂降り
5 「変態って、言わないのか?」 「……」 言えない。今の状態を望んだのは他ならぬ、円香自身なのだから。 それに、物理的にも難しい事情があった。 「ぉ。もご……ぉ」 今まさに、プロデューサーの太くてたくましいものが、円香の口内に入り込んで、塞いでいるのだから。 ――キスと指での愛撫で、いとも簡単にイかされてしまった円香。 『この一回だけで、終わりだなんてことは、ないですよね? ミスターテクニシャン』 いつものように威圧のこもった、鋭い眼差し。 だけどどこか、駄々をこねる子供のように、意地を張っている雰囲気を醸し出していた。 『もし、これで終わりだなんて言うのなら。……そうですね。あなたに引き裂かれたストッキングを、経費として会社に請求しますから。プロデューサーの、性欲解消を目的とした猥褻行為の一環によって、ストッキングのとある部分が手で乱暴に引き裂かれ、破損しました。……と、具体的な請求理由を書きますから』 ……はづきさんが黙っていないなそれはと、プロデューサーは思った。 我ながら無駄に口が回る。一体何を言っているのだろうと、円香は深くため息をついた。 ここでプロデューサーは決して、円香に『どうすればいい?』などと聞いてはいけないのだ。 『アイドルをエスコートするのが、あなたの仕事でしょう?』 なんて返事がくるだろうから。 確かに。エスコート役は、プロデューサーの役割だと思う。 (それは一理あるな) というわけで、プロデューサーは少し考えてから、言った。 現状に即した、最善の提案だ。 『シックスナインしよう』 『は?』 一回イったけれど、円香はまだまだ満足していない様子。さりとて、真面目な性格の彼女は、自分だけが一方的に気持ちよくなるのはよくないと思っているのではなかろうか。 そう聞かされて、円香は納得しつつも、面白くなかった。 『なるほど。折衷案というわけですか。流石、調整役はお手の物ですね』 人に提案させておいて、ケチをつけるのは鬱陶しい限りだろう。 本当に、どこまでも面倒くさい女だと、円香は自分を評した。 もし自分が男性だったとしたら、こういう女とは、絶対に付き合ったりしないことだろう。こちらから願い下げだ。自信を持って、そう言える。……言えてしまう。 とにかくも、円香はプロデューサーの案を受け入れたので、二回目の交わりが始まった。 だけど……。 「うぅぅぅぅ!」 円香はまたも、一気にイかされそうになっていた。 早いし弱い。どこまでもへたれたキャラクターだ。見かけ倒しもいいところ。何、プロデューサーの体の上で、ひくひく震えているのだか。 「あっ! あひっ! こ、こんな……」 このままでは面白くない。一矢報いたい。円香はプロデューサーのものを手で掴み、口を思い切り開けて、咥え込んだ。 「あぐ……。う、ぶ……うぅ」 それなのに、プロデューサーの愛撫に耐えかねて、すぐに脱力し、無様な嬌声を発していた。 当然、フェラチオなんて、上手くできるはずもない。 「ひっ! あひっ! そん、なっ! 舌……だめ! あっ!」 必死になって、咥え直そうとするけれど、無駄だった。 男性にとって、とてもデリケートな部分だ。噛んだりしたら、大変なことになるとわかっている。半端な気持ちで咥えてはいけない。今はとても、無理だ。 「あぁぁぁっ!」 プロデューサーの舌は、まるでAIを搭載した自動掃除機のエッジクリーニングブラシのごとく、せわしく高速回転して、円香の恥部をいじめ抜く。 この非常識な動きは一体何なのだと、円香は歯を食いしばりながら、心の中で毒づいた。 「あっ! あっ! ううぅ! い、いい加減に……」 咥えるのが難しいのならば、せめて舌でなめ回そうとした。けれど、それすらも、難しかった。 刺激に負けて顔を突っ伏した先は、先っちょの、ぬるぬるした部分。 「うぁぁ。あっ! はぁっ! だ、め! 力、入らなぃ……」 ぴちゃぴちゃと、生々しい音が聞こえる。自分の下半身が、集中的に攻められている。おしめが必要なくらいに、湿らされていく。円香の秘所から大量に分泌された愛液が、やがてプロデューサーの口を伝い、顎から首まで濡らしていった。 と、そんな時だった。 「ひゃっ!? そこ、は……。うぁぁっ! ちょっ! どさくさに紛れて、ど、どこを触っているんですかっ!? ……ひああぁっ!」 思わず、小糸が驚いた時に出すような、小動物めいた声を発してしまう。円香は驚きに、両目を見開いた。 プロデューサーはぐにぐにと、円香のお尻をこね回した。その挙げ句、お尻の割れ目をぐい、と強く開いて、あろうことか、キュッとすぼんだ穴を指先で撫で回したのだ。 強い恥じらいと怒り。逆鱗に触れるとは、このことかもしれない。円香は抗議をしようとしたけれど、クリトリスを舌先でこね回されて、びくんと、陸に打ち上げられた魚のように、上体を跳ね上げてしまった。 「ふ、ざけないで……ひ、ひゃああっ! ……あっ! い、いくっ!」 瞬間的に、迎えさせられた絶頂。 これではまるで、お尻の穴に触られた瞬間に、イかされたみたいだ。 「最……低っ! 産業廃棄物以下!」 円香は、はあはあと粗い吐息もそのままに、プロデューサーの上に、力なく横たわる。 やり場のない怒りと、それすらも上回る気持ちのよさが、ものすごく悔しい。まるで、男の力で、屈服させられたみたいだから。 「この……! この……ミスター敷き布団!」 その寝心地は、最高だった。 |