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土砂降り









 滝のような雨。程々の風。

 モノクローム。あるいは水墨画といったところ。夜の深い闇に包まれた、黒と、僅かな白色だけで織りなされる世界。

「あっ! あっ!」

 人里離れた山の中で。一組の男女が、全裸で性行を続けていた。立ちバックという野性的なスタイルで、激しくぶつかり合う。

『あなたのせいで、どうしようもない程に、体が火照ってしまいました』

 円香は、どうにかして文句を付けようとした。けれど、こういうときに限って、いい言葉が浮かばない。

 三回も連続で、絶頂を迎えさせられた。その余韻が、今も残っているのだから。高揚した気分は、簡単には落ち着かない。

『責任をとってください』

 散々楽しんでおいて、この女は一体何を言っているのだろう? 円香はつくづく、自分の勝手さに呆れた。

 けれど、プロデューサーは、マイペースだった。

『すごい雨だな』

 そして彼は、有り得ないことを言ったものだ。

『円香は、まだまだし足りないんだろ? 火照りを冷ましたいのならさ』

 そして、車の外を指さした。

『いっそ、天然のシャワーでも浴びながら、しようか。バスタオルなら、何枚も持ってきてるしな』

『……』

 青姦。野外セックス。思い浮かぶのは、アダルトな分野の単語。一般のアイドルとは隔絶した世界。

 は? 何を考えているんですか。本気で有り得ない。頭わいてるんじゃないですか。

 ……普段ならそう言ってプロデューサーを睨み付けるような、非常識極まる提案。けれど、非難する余裕も、暇すらなかった。

 思い立ったら吉日とばかりに、円香はプロデューサーによって、半ば無理矢理サンダルを履かされて、外へと誘われた。

 そして……円香は一切抵抗することなく、自ら進んで、車から外へと出て行ったのだった。

『うっ!』

『すごいな』

 二人で、目の前すら見えないような、豪雨を全身で浴びる。

 空気も雨も、決して冷たくはなくて、まるでぬるま湯にでも浸かっているかのよう。

『外……』

 円香は思う。こんな行為。誰かに見られたとしたら、アイドルとしての自分は確実に終わることだろう。その可能性は限りなく低いけれど、倫理に反した大変危険な行為をしているのだと、痛い程実感する。背徳感に、背筋がぞくりと震えた。

『それじゃ、早速するぞ』

『あっ!』

 いきなり最高潮。

 プロデューサーは、雨に打たれて戸惑う円香の体を羽交い締めするようにした。そうして後ろから、身長差を解消する為に腰を屈め、手で押さえながら微調整し、挿入していった。

 先端が入り口付近に当たっているのが、円香にもわかる。

『遠慮なく声を出していいぞ』

 何を言ってるんだと、円香はそう思った。それも最初だけだった……。

 土砂降りの雨は、音も、視界も、全てをかき消してくれる。羞恥の余り、手で口を押さえて誤魔化す必要などなかった。

 ずにゅりと、埋没していく。

 痛みはまるでない。雨のせいもあるけれど、前戯をたっぷりと楽しんだから、円香の恥部は充分過ぎるほどにほぐれていた。潤滑油代わりのローションすら塗る必要がなく、円香の割れ目はプロデューサーのものを、難なく受け入れていった。

 ――そして、今に至る。

「あっ!」

 円香の中。狭い膣の内側に、プロデューサーの太い性器が擦れ合う度に、円香は切羽詰まったように喘いだ。

「あひっ! そんな、激しすぎ……あっ! くっ! 深、い! あぅっ! あっ!」

 円香の子宮にまで、楽々到達するような長さ。そんなもので容赦なく、小突かれている。

「あっあっあっ。こんな……。外でなんて、最低。あなたは、盛りのついた野良猫ですか? あっ!」

 正論ではある。説得力は皆無。

 何を今更なことだ。嫌ならば、拒否をすればよかった。けれど、円香はしなかった。彼と、同類だ。

「好きな人としてるんだ。盛って何が悪いんだ?」

「あぅっ!」

 一際ずぶりと大きく突かれて、円香は目を見開いた。文句ばかりでうるさいぞと、言われているかのよう。

「円香は、気持ち良くないのか?」

「んっ! 気持ち、いいですよ。残念なことに。すごく。あっ! またっ! はぅっ! んひっ!」

「だったら、声を出して欲しいな。恥じらいなんて、捨てて」

「く……!」

 そんなことができるか。

 いつものように突っかかりたいのに、断続的に襲いかかる快感に、円香は嬌声を出していた。

「あ、うっ! ……ちょっと、優しく。あっ!」

 その望みは、聞き入れられない。プロデューサーは容赦なく、下腹部を円香の尻めがけて叩きつけている。いつもと違い、犯すかのように荒々しく。

「あ……。だ、め。立って、られな……」

 足に力が入らない。倒れそう。円香がそう思っていると……。

「プロデューサー?」

 円香は両腕を引っ張られるようにして、上体を固定されていた。

「あ、あ、あ、あ、あ! もう! 調子に乗って! んぁぁっ!」

 ばちゅんばちゅんと、交わる音がしているはずだけど、雨音で聞こえない。

 円香の小振りな尻が、交わり合う激しい衝撃で震えるようにたゆんでいる。少し離れた所から見たとしたら、プロデューサーのものが、円香の中へと激しく出入りをしているのがわかることだろう。

「ひああっ!?」

 プロデューサーは突然、掴んでいた円香の腕を離して……。

「あ、あ、あ!」

 代わりに円香の胸をもぎゅもぎゅと、強めに揉み、乳首を両方同時に捻りあげた。

 先程絶頂を迎えさせられて、敏感になっていたところを再び攻められた。円香は一瞬、意識が飛びかけた。

「はぐっ!」

 更に、下の方にも深い突きを咥える。ずんっ、と、奥に当たる感覚が連続で、繰り返される。

「あっ! ひっ! ひっ! あ、当たってる。奥に……くぅぅっ! 奥まで! くひっ! あっ!」

 普段のクールな、落ち着き払った顔が嘘のよう。円香は今にも泣き出してしまいそうな、情けない表情をしていた。

「あっ! だめっ! あひっ! 深い! これ、だめ!」

 深くて、熱くて、そして……切ない。

 円香は、素直な気持ちを、口走っていた。

「気持ち……いぃ。あ……あっ!」

「円香。今、気持ちいいって言った?」

「い、言ってません! 勘違いです! 空耳です! あっ! んっ! 気持ちいいわけが! あんっ! はぁんっ! あっ! ありま、せん!」

 誤魔化しなど、無駄だ。円香の体は、明らかに悦んでいた。体は正直だという事実に、円香は恥じらった。

 円香は罰を受けることになる。

「え……? な、何で、止めるんですか? ここで」

 突然の中断。テンポよく動いていたのに、突然止まった。

「円香が、気持ちいいって言ってくれないから」

「っ!」

 意地悪な男だ。……もしかすると、彼は拗ねているのかもしれない。

「……き、もち、いい、です。認め、ます。これで、いいですか?」

「それならいいよ」

 嬉しそうな声と共に、ご褒美の挿入再開。

「円香。こんな所だ。どんなに淫らな声を出しても、エロい顔をしても、誰にも知られることはないんだ」

 タンタンタンと、ダンスのレッスンをするかのように、リズムカルに突き込むプロデューサー。

「ひゃふっ! ひぁっ! あひっ!」

「だから、さ。俺に立ちバックで奥までずんずん突っつかれて、素直にあんあん感じまくってる姿を、見せてくれないか? 俺だけに」

 今だけは、素直になってくれ。

 普段ならば、願い下げ一択の提案。今は、その限りではない。ただし、一つ条件がある。

「そうすれば。途中で動きを止めたり、しないですか?」

「ああ。約束する」

「仕方が、ないですね」

 ああ、もう一つ条件があった。とても大切な事だ。

「誰にも、言わないでくださいね?」

「当たり前だ。言うわけないだろ、俺とお前の秘め事なんて」

 こんなの、私じゃない。本性をさらけ出した姿なんて、何かが壊れてしまったかのよう。

「信じますからね」

 全裸。野外。夜。暗闇。豪雨。雑草が生い茂る、誰からも忘れ去られたような、荒れ果てた駐車場。そして、青姦。

 まるで、野生の獣になった気分。

 円香は最愛の人に、発情した雌の顔を見せることに決めた。

「あっ! あっ! あっ! 気持ちいい!」

 ステージ上での全力ボイスのように、思いきり声を張り上げた。

「奥、いい! ごつごつされて! すごい!」

 だらしなく大口を開けて、唾を飛ばし、犬のように舌を出して、喘ぐ。

「あんっ! おっぱいもいいぃ! 乳首ぎゅってされるの、たまらない! もっと強くつねって!」

 吹っ切れたように。狂ったように。円香は叫んだ。

「円香、好きだぞ」

「!」

 ぎゅっと、締め付けが強くなるのが、プロデューサーにはわかった。好きと言われて、円香は嬉しかった。その気持ちが、プロデューサーのものを、きつく締め上げた。

「私も……です」

 言葉が、円香の心を揺さぶった。

「ごめんなさい!」

 なぜか、懺悔の言葉も出てくる。

「いつも……悪態ばかりついて、ごめんなさい! 生意気で、ごめんなさい!」

 素直になれない子供な自分が情けなくて、円香は泣いていた。

 それでも、どんなに涙を流しても、豪雨は全て覆い尽くしていく。なかったことに、してくれる。

「プロデューサー……! 好きです! 愛してます!」

 有り得ない。彼女は、絶対にそんな事を口にする人ではないと、他人は誰もが言うことだろう。

 馬鹿じゃないのと、もしも自分がもう一人いたら、憤怒と憎悪の眼差しで、罵倒することだろう。ふざけたことを口走っているんじゃない、と。

 けれど、今だけは別。奇跡的に、様々な条件が整ったのだから。

「好きぃ」

 普段なら、口が裂けても言わないような、甘ったるい言葉。今なら何でも言える。……まず間違いなく、後になって冷静な気持ちで思い返したら、恥ずかしすぎて悶絶することだろう。

 プロデューサーに八つ当たりもしてしまうに決まっている。

 けれど、今はいい。

 依存症のように、後先考えずに、快楽に溺れたい。

「俺もだ。円香、可愛い。素直な円香も。意地っ張りな円香も。照れ屋な円香も。全部可愛い。愛してるぞ」

「あああああああっ! 好き! 好きい! 気持ちいいぃっ! もっともっと! もっと突いて! もっと激しくして! 私のおま○こ、かき混ぜてぇっ!」

 交わりが早くなるに連れて、円香の小ぶりな胸の膨らみが、ぷるぷるとせわしなく揺れていく。

「プロデューサー……。あ、ああっ! あああああっ! ま、また、いき……ます! はぅっ! すごい! 壊れちゃう!」

「う……。そろそろ出そう」

「!」

 円香はまた、叫んだ。

「中に! 中に出してください!」

 もはやアイドルだなんて、上品なものじゃない。盛りのついた、雌犬だと円香は思った。

「そのまま私の中に! 奥にっ! あなたの精子をいっぱい注ぎ込んでください! くぅぅっ! いくぅっ!」

 円香はつま先立ちになりながら、強い快感に酔いしれていた。

 少女の華奢な体を、まるでハンマーで痛めつけるように、ばんばんばんと、プロデューサーは攻め続けた。

「あっあっあっあっ! あんっ! 好き! 好きぃ! お○んこ気持ちいいよおぉっ! いくっ! いくぅ! いっちゃうぅぅぅ! おちん○んすごいぃぃぃっ! 気持ちいいいぃぃっ!」

 ……あなたは、アイドルで上手く行かなくなったら、AVデビューでもする気ですか? と、円香は思った。

 どんなに有り得ない声を出しても、全てがかき消された。だから、思うがままに叫ぶ。こんな事は、もう二度とないかもしれない。

「いっちゃううぅぅぅぅ! あ、あ、ああああああっ! あんんんんっ!」

 一足先に円香は絶頂を迎え、少し遅れてプロデューサーは、円香の子宮に白濁した液体を流し込んでいった。

「ああぁ……。はぁぁ……。で、出てるぅ……。私の中に……いっぱい。プロデューサーの……」

 どぷり、どぷり、ごぽ、ごぽと、消火用の放水ホースが大きく波打つかのように、円香には感じられた。

 体内に、大量の精子を注入されていく、生命の温もり。円香は恍惚の表情。

「あ、あ、あぁぁ……。はぁぁ……。はふぅ……。気持ち、よかった、です」

 円香は嬉しそうに笑い、幸せな気持ちを噛みしめた。

「プロデューサー。……ありがとうございます」

 微笑ではない。満面の、子供のような笑顔で。



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